トイ・プードルの膝蓋骨外方脱臼に対する整復術

今回はトイ・プードルの膝蓋骨外方脱臼のお話です。

2ヶ月齢で初めて受診され、足に力が入りにくいという症状でしたが、2ヶ月後には両後肢で起立不能の状態になりました。

膝蓋骨の外方脱臼によるもので、当初は指で整復できましたが、経過とともに骨の成長に対し、筋肉の成長が遅れてしまい、膝蓋骨が整復不能となり4ヶ月齢で早急に手術が必要と判断しました。

 

術前のレントゲン画像です。

横から撮影、膝蓋骨の脱臼を確認

横から撮影、膝蓋骨の脱臼を確認

上から撮影、矢印が脱臼した膝蓋骨、外方脱臼によりX脚になっている

 

手術です。緊急性があったため両側同時に施術します。

術前の様子、両後肢とも真っ直ぐにならない

 

右肢から施術します。

切皮後、膝蓋靭帯が外方にズレている

 

内側の関節包切開、大腿骨滑車は溝が無くツルツルの状態

 

外側関節包も切開して大腿骨滑車を露出、溝はありません

 

正面から、溝の消失が確認できる

 

造溝術を施しました

 

正面から、溝が深くなっています

 

膝蓋靭帯の位置が真っ直ぐに矯正できました

 

内側の関節包を縫縮しました

 

左側も同様に施術していきます。

反対肢も同様に行います

 

 

 

 

無事手術が終わりました。

術後のレントゲン写真です。

膝蓋骨は正中に整復され、X脚だった足も真っ直ぐに矯正できました。

横から

横から

術後レントゲン、膝蓋骨が正中に整復されている、肢も真っ直ぐになりました

術後は動きがぎこちなかったですが、徐々に歩行できるようになり2ヶ月後には生活に支障ないレベルまで機能回復しています。

トイ・プードルの橈尺骨骨折に対するプレーティング

今回はトイ・プードルの橈尺骨骨折の手術のお話です。

8ヶ月の子で転倒してから左前肢の完全挙上で他院より紹介で来院されました。

 

レントゲン画像から橈骨・尺骨の2本とも骨折していることがわかります。

横から撮影したレントゲン画像

上から撮影したレントゲン画像

治療はギプス固定などもありますが、癒合不全や変形癒合による術後の跛行などの合併症リスクが高くなるため、治療の第1選択は手術によるプレーティングでの固定です。

 

この子も手術することになりました。

手術直前の様子、滅菌フィルムを貼り終えたところ

 

切皮し、筋間を分離して骨折している橈骨までアプローチします。

骨折部位へのアプローチ

橈骨が折れているのがわかります

 

折れた橈骨を整復して、上からプレートを当てます。

適切な位置にスクリューホールが来るように、把持鉗子で抑えます。

これが結構難しいです。

絶妙な位置で固定します

 

位置が決まれば、あとはスクリューを挿入していきます。

計5本、スクリューを固定しました

完成

術後のレントゲン写真です。

かなり正確に整復できました。

尺骨の位置もバッチリです。

術後、横から撮影

術後、上から撮影

 

術後の経過は非常に良好で、3日後の退院時にはしっかり着肢して、2ヶ月後には骨の癒合も良好でした。

 

 

チワワの膝蓋骨内方脱臼に対する整復手術

今回は膝蓋骨内方脱臼のお話です。

症例は1歳のチワワちゃんで右後肢跛行を主訴に来院されました。

この子の右の膝蓋骨は完全に内方に変位しており、正中に整復することはできませんでした。

膝蓋骨内方脱臼のグレードⅣ(4段階のグレードで1番悪い)と診断し、手術することとなりました。

 

術前レントゲンです。

矢印は変位した膝蓋骨です。

 

毛刈りを行い、消毒してフィルムドレープを貼りました。

 

切皮しました。

膝蓋靭帯が内方に変位しています。

 

関節包を切開し、大腿骨滑車を目視しています。

本来、溝があるはずですが、平坦になっています。

 

造溝術を行い、溝をつくりました。

 

 

膝蓋靭帯が真っ直ぐになりました。

 

次に脛骨粗面転移術をおこないます。

脛骨粗面を外方にずらして、K-wire2本で固定しました。

 

 

外側の関節包を縫縮しました。

膝蓋靭帯は正中に整復されています。

 

術後レントゲンです。

膝蓋骨はしっかり正中に整復されています。



 

小型犬の前十字靭帯断裂に対するTPLO

今回は前十字靭帯断裂の手術のお話です。

 

9歳の雑種犬(チワワ×プードル)で左後肢の跛行で来院されました。

触診とレントゲン写真で前十字靭帯断裂と診断しました。

 

  

左後肢の脛の骨が右足と比べて前方に変位しているのがわかります。

 

前十字靭帯断裂の治療の第1選択は手術(TPLO:脛骨高平部水平化骨切り術)となり、この子も手術を行うこととなりました。

手術の目的は膝関節内の確認(前十字靭帯・半月板損傷の有無)と、脛骨高平部の傾斜を水平に近づけることにより、膝関節を安定化させることです。

 

術前は毛刈りを行い念入りに消毒をおこないます。患肢表面にフィルムドレープを貼ります。

 

切皮し、関節包を切開し大腿骨滑車が見えます。

この子は膝蓋骨内方脱臼もあったので溝が浅く、軟骨の糜爛病変がありました。

 

前十字靭帯と半月板の確認です。半月板損傷はありませんでした。

 

次にTPLOをおこないます。

写真は骨切りを行うラインを描いています。

 

骨切りスタートです。

この瞬間が一番気を遣います。

 

骨切り後に骨片を術前の計画通りの距離を回転させます。

 

目印まで回転させました。

 

目的の位置で仮固定します。

 

プレートをあてがい、すべてのスクリューホールが適切な位置にくるように調整します。小型犬は骨が小さいため、ミリ単位の調整が必要で細心の注意を払います。

 

プレートの位置が決まれば、あとはスクリューを挿入していきます。

スクリュー設置完了です。

 

膝蓋骨内方脱臼の併発もあったため、滑車の造溝術も行います。

 

造溝後

 

手術は予定通り終了です。

 

術後レントゲンです。

 

入院はほとんどの場合、4泊ほどです。
この子も術後の経過は良好で、退院時には多少かばいながらも着肢できていました。

術後1〜2ヶ月もするとかなり回復します。

 

 

猫の中足骨骨折に対するピンニングによる整復

今回は猫の中足骨骨折に関してです。

この症例は中年齢の頻繁に外に行く猫で、後肢跛行を主訴に来院しました。

レントゲン検査にて左後肢の4本の中足骨の骨折を確認したため、手術となりました。

  

 

術式はピンニングによる整復を選択しました。

写真のように骨折した4本全ての中足骨にピンを挿入して固定します。

 

 

術後のレントゲンです。

 

 

しっかりと整復できています。

術後は1ヶ月外固定をして保護しました。

術後半年の現在、経過良好です。

(20201224)

猫の大腿骨遠位成長板骨折に対するピンニングによる整復

今回は猫の大腿骨遠位成長板骨折についてです。

症例は3ヶ月の仔猫で外にいたところを保護され、右後肢完全挙上で他院からの紹介で受診されました。

 

レントゲン画像です。

大腿骨の近位側が前方に大きく変位しています。

 



術式は髄内ピンとクロスピンを併用して整復しました。

まず髄内ピンにより骨折部を整復します。

 

クロスピンを挿入したところです。

 

術後のレントゲンです。

 

 

術後3ヶ月の現在、着肢良好で経過はバッチリです。

(20201224日)

犬の環軸不安定症に対する腹側固定術

今回は犬の環軸不安定症についてです。

環軸とは、首の骨である環椎(第一頚椎)と軸椎(第二頚椎)からなる関節のことで、

この部位が不安定になることで頸部の脊髄に様々な影響がでます。

軽度の場合は頚部の疼痛、起立姿勢や歩行の異常、重度の場合は四肢の麻痺、排尿障害、および呼吸異常などの症状が認められます。

小型犬種、特にヨークシャテリア、チワワ、トイプードル、ポメラニアンでの罹患症例が多いと言われています。

症例は1歳のヨークシャテリアで頸部の間欠的な強い疼痛が認められました。

CT検査にて環椎ー軸椎間の不安定性を認め、環軸不安定症と診断しました。

 

 

治療は手術による腹側固定術を選択しました。

環椎ー軸椎間をアプローチして、関節間をピンで固定します。

 

 

環椎・軸椎にそれぞれピンを固定し、その上から骨セメントで覆い固定しました。

 

術後のレントゲンです。

 

 

術後は疼痛が消失し、経過は順調です。

(20201225)